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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)324号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を高松高等裁判所へ差戻す。

理由

上告代理人小松博美上告理由は末尾に添附した別紙記載のとおりである。

第一点について。

所論の如く原判決は「昭和二一年秋控訴人は小作人大原隆美から一旦本件農地の引渡を受けてれんげを蒔いたことを認め得るけれどもさらに当裁判所がその成立を認める甲第二号証によれば大原においては右農地を返還することを好まなかつたがいやいやながら止むを得ずこれを返還するに至つた事実を窮知することができるから単に返地契約に基づいて一旦農地の返還を受けてれんげを蒔いた一事のみを以て直ちに自作農創設特別措置法第六条ノ二第二項第一、二号に所謂適法且つ正当な契約解除であると断じ得ない」と判示している。しかし単にいやいやながら返還したというだけでは同法にいう適法且つ正当なものではないと断定することはできない。いやいやでも結局自由なる意思決定によつて返還したのなら不適法といえないのは勿論ただこれだけで直ちに不正当のものということはできない。原審はなお右法条所定の事由につき審理して正当なりや否やを決しなければならない。要するに適法且つ正当でない契約と断定するには説明が足りない理由不備の違法ありというの外ない。従つて上告理由は結局理由あることに帰し破棄を免れないものである。

よつてその余の上告理由に対する説明を省略し民訴四〇七条に従い原判決は全部破棄すべきものと認め主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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